Rock Me! (その2)
釣行二日目。
今の時期、例年なら東へ展開するのが常だが、既に離富したSさんからのメール報告や、山ちゃんの検分からすると、余り宜しく無いらしい。そこで、Sさんのメール中にあったB川に行くことに。約10年振りか。にじますが増えすぎて、山女が減ったので足が遠のいていたのだった。この谷は、10年前仲間内で最も熱い場所だった。容易に人を寄せ付けない峻険な渓谷に、野性味あふれる谷棲の山女が一杯いたのだった。
山ちゃん、Kさん等は当然、初めて。僕も10年振りなので遡行に自信がない。昔は最初の通らずまで、一気に行って高巻後、下降してからロッドを繋いだものだった。その何時もすっ飛ばしていた区間のプールで、山ちゃんが山女を発見してしまい「なぁ、ええやろ?」てことで早くも釣り開始。一枚岩をくり貫いたようなゴルジュ帯の山女は、案の定スプーキーで釣れなかった。しかし、此処で驚いたのが、昔この辺りの遡行など、気にもとめない位、楽勝だったのだが、頻繁に現れる岩盤のへつりに全く腰が引けてしまっているのだ。(僕の腰ね)早い話が、怖いのだ。年取ったのかな。いや、昔の自分の無鉄砲さに寧ろ呆れる思いか。
そして、なんとか通らずに到着。いま見ても戦慄する流れだ。両岸の岸壁が交差する地点に、滝がある。滝壺は黒々と渦巻いている。死んでも滑落したくない流れだ。じっくり見ていると、膝が震えそうなので、さっさと左岸に取り付き、登攀を始める。朧気ながら、ルートは覚えているのだが、途中休もうにも、平らな場所が全く無い。従って、木に掴まりながら息を整えることになる。湿気と冷や汗がメガネを曇らせ、額の汗が目に入って痛い。ぼんやり谷側を覗くと、自分が足を置いている場所から数メートルの所で、スッパリ滝壺に落ち込んでいる。この狂気の場所から、一刻も早く立ち去りたいのだが、恐怖の余り、その一歩が前に出ない。気分を鼓舞し、恐れに支配されない様に、慄然と進むことでなんとか、クリア。山猿の様に先行していた山ちゃんが、河原のデカイ石に腰掛けてニヤニヤしている。「えらいなぁ」存外ケロッとしている。後続していたKさんも、平静のようだ。案内人である自分が一番取り乱しているようだった。
此処で、僕もロッドを繋いで戦線復帰。前方で靭やかにバンブーロッドを操るKさんに異変。後方で待機していた我々の目の前を、目を疑うような魚が遁走してきた。それとともに、Kさんもすっ飛んできた。「ごめんなさいよー!」と彼も通過していった。さっき、我々の前を通過した45cmはあろうかと思われるにじますが掛かっていったのだ。鉄砲玉の様に荒瀬に逃げ込んだにじますは、我が意を得たりともう、ひとのしした。その瞬間「切れてもうたー。」とKさんが叫ぶ。一瞬の出来事だった。しかし、こんな源流帯に居るには場違いの素晴らしい魚体だった。山ちゃんと僕の脳裏に真っ赤な頬とメタリックな魚体が焼き付いてしまった。「おーし。やったるでー!」と山ちゃんヤル気満々。ティペットを4Xに変えている。今年、僕は解禁以来、巨大なにじますに遭遇することが多かったので、あんまし同調できない。そうまでして釣りたいもんなのか。
しかし、気合とは裏腹に魚の反応は皆無。Kさんが尺クラスの山女をバラし、山ちゃんがようやく、25cmの山女を釣った所で脱渓地点に到着。
結果は散々だった。脱渓地点から急な斜面を一気に登り、トボトボと林道を歩いていると、上空に不穏な動きが。
「ごろごろごろー!ぴかー!ばちばちばちぃー!」じーざす。霰が降ってきたのだ。霰に打ち付けられながら、逃げる様に車に退避。一先ず、屋根の有る所で着替えるために、村まで行く。そして、村に到着すると何ごとも無かった様に晴れ。
「性悪霰やなぁ~。」と悪態をつきながら着替え、近くの蕎麦屋で昼飯。
一服してから温泉へ。
溶解後、Kさんは翌日、出勤なので帰途へ。僕と山ちゃんは性懲りもなく、先程の谷の上流で夕まずやることに。
相変わらずの悪路を鯔して、河原に到着。河原すっぺんぺんでおさかな居る様には見えない。怪訝な顔をしていた山ちゃんが「ここ、魚いてんの?」と聞いてくるので、「まぁ、居ないことは無いでしょう。」と曖昧な返事をしてしまった。浅いプールのてっぺんの流れこみでやっていた山ちゃんから、景気の良い声が「出たでー!デカイよー。」うっそーと思いながら駆け寄ると、銀色の魚がウネっている。むむむ。メジャーをあてると、なんと33cm!「久しぶりやでー。尺モン釣ったんわー」山ちゃん、流石に嬉しそう。
その後、山ちゃん何時もの如く前傾姿勢で、物凄い集中力を見せて釣っている。僕が下流で23cm位の山女の写真撮っていると上で「やられた~!」て声が。「今のむちゃむちゃデカかったでー!ティペット切っていきよった。」ふーむ。尺連続。恐るべき流れ。
ティペット組み換えしている山ちゃんを残して上流へ。2つの落ち込みを擁する絶妙なプールに到達。手前の落ち込みにパラシュートを落とすと、ゆっくりと巨大な頭が毛鉤を消しこんだ。ユックリ合わせると「ズシッ」とした重量とトルクのある走り。水中で銀が点滅する。重くて中々寄って来ながったが、慎重にやり取りしてランディング。「デカッ!」メジャーをあてると、先ほどと同じく33cm。「この川、どないなってんねん!」二人で嬉しく大混乱してしまった。
その後、薄暗闇の中で大饗宴が始まった。23cmクラスは無数。にじますも混じり、一大カオスに。あっという間に20匹以上釣って、とっぷり暮れた河原をトレースして車に戻る。帰りの車中が華やかだったのは言うまでもない。
途中の村の山車。
良い釣りだった。
今の時期、例年なら東へ展開するのが常だが、既に離富したSさんからのメール報告や、山ちゃんの検分からすると、余り宜しく無いらしい。そこで、Sさんのメール中にあったB川に行くことに。約10年振りか。にじますが増えすぎて、山女が減ったので足が遠のいていたのだった。この谷は、10年前仲間内で最も熱い場所だった。容易に人を寄せ付けない峻険な渓谷に、野性味あふれる谷棲の山女が一杯いたのだった。
山ちゃん、Kさん等は当然、初めて。僕も10年振りなので遡行に自信がない。昔は最初の通らずまで、一気に行って高巻後、下降してからロッドを繋いだものだった。その何時もすっ飛ばしていた区間のプールで、山ちゃんが山女を発見してしまい「なぁ、ええやろ?」てことで早くも釣り開始。一枚岩をくり貫いたようなゴルジュ帯の山女は、案の定スプーキーで釣れなかった。しかし、此処で驚いたのが、昔この辺りの遡行など、気にもとめない位、楽勝だったのだが、頻繁に現れる岩盤のへつりに全く腰が引けてしまっているのだ。(僕の腰ね)早い話が、怖いのだ。年取ったのかな。いや、昔の自分の無鉄砲さに寧ろ呆れる思いか。
そして、なんとか通らずに到着。いま見ても戦慄する流れだ。両岸の岸壁が交差する地点に、滝がある。滝壺は黒々と渦巻いている。死んでも滑落したくない流れだ。じっくり見ていると、膝が震えそうなので、さっさと左岸に取り付き、登攀を始める。朧気ながら、ルートは覚えているのだが、途中休もうにも、平らな場所が全く無い。従って、木に掴まりながら息を整えることになる。湿気と冷や汗がメガネを曇らせ、額の汗が目に入って痛い。ぼんやり谷側を覗くと、自分が足を置いている場所から数メートルの所で、スッパリ滝壺に落ち込んでいる。この狂気の場所から、一刻も早く立ち去りたいのだが、恐怖の余り、その一歩が前に出ない。気分を鼓舞し、恐れに支配されない様に、慄然と進むことでなんとか、クリア。山猿の様に先行していた山ちゃんが、河原のデカイ石に腰掛けてニヤニヤしている。「えらいなぁ」存外ケロッとしている。後続していたKさんも、平静のようだ。案内人である自分が一番取り乱しているようだった。
此処で、僕もロッドを繋いで戦線復帰。前方で靭やかにバンブーロッドを操るKさんに異変。後方で待機していた我々の目の前を、目を疑うような魚が遁走してきた。それとともに、Kさんもすっ飛んできた。「ごめんなさいよー!」と彼も通過していった。さっき、我々の前を通過した45cmはあろうかと思われるにじますが掛かっていったのだ。鉄砲玉の様に荒瀬に逃げ込んだにじますは、我が意を得たりともう、ひとのしした。その瞬間「切れてもうたー。」とKさんが叫ぶ。一瞬の出来事だった。しかし、こんな源流帯に居るには場違いの素晴らしい魚体だった。山ちゃんと僕の脳裏に真っ赤な頬とメタリックな魚体が焼き付いてしまった。「おーし。やったるでー!」と山ちゃんヤル気満々。ティペットを4Xに変えている。今年、僕は解禁以来、巨大なにじますに遭遇することが多かったので、あんまし同調できない。そうまでして釣りたいもんなのか。
しかし、気合とは裏腹に魚の反応は皆無。Kさんが尺クラスの山女をバラし、山ちゃんがようやく、25cmの山女を釣った所で脱渓地点に到着。
結果は散々だった。脱渓地点から急な斜面を一気に登り、トボトボと林道を歩いていると、上空に不穏な動きが。
「ごろごろごろー!ぴかー!ばちばちばちぃー!」じーざす。霰が降ってきたのだ。霰に打ち付けられながら、逃げる様に車に退避。一先ず、屋根の有る所で着替えるために、村まで行く。そして、村に到着すると何ごとも無かった様に晴れ。
「性悪霰やなぁ~。」と悪態をつきながら着替え、近くの蕎麦屋で昼飯。
一服してから温泉へ。
溶解後、Kさんは翌日、出勤なので帰途へ。僕と山ちゃんは性懲りもなく、先程の谷の上流で夕まずやることに。
相変わらずの悪路を鯔して、河原に到着。河原すっぺんぺんでおさかな居る様には見えない。怪訝な顔をしていた山ちゃんが「ここ、魚いてんの?」と聞いてくるので、「まぁ、居ないことは無いでしょう。」と曖昧な返事をしてしまった。浅いプールのてっぺんの流れこみでやっていた山ちゃんから、景気の良い声が「出たでー!デカイよー。」うっそーと思いながら駆け寄ると、銀色の魚がウネっている。むむむ。メジャーをあてると、なんと33cm!「久しぶりやでー。尺モン釣ったんわー」山ちゃん、流石に嬉しそう。
その後、山ちゃん何時もの如く前傾姿勢で、物凄い集中力を見せて釣っている。僕が下流で23cm位の山女の写真撮っていると上で「やられた~!」て声が。「今のむちゃむちゃデカかったでー!ティペット切っていきよった。」ふーむ。尺連続。恐るべき流れ。
ティペット組み換えしている山ちゃんを残して上流へ。2つの落ち込みを擁する絶妙なプールに到達。手前の落ち込みにパラシュートを落とすと、ゆっくりと巨大な頭が毛鉤を消しこんだ。ユックリ合わせると「ズシッ」とした重量とトルクのある走り。水中で銀が点滅する。重くて中々寄って来ながったが、慎重にやり取りしてランディング。「デカッ!」メジャーをあてると、先ほどと同じく33cm。「この川、どないなってんねん!」二人で嬉しく大混乱してしまった。
その後、薄暗闇の中で大饗宴が始まった。23cmクラスは無数。にじますも混じり、一大カオスに。あっという間に20匹以上釣って、とっぷり暮れた河原をトレースして車に戻る。帰りの車中が華やかだったのは言うまでもない。
途中の村の山車。
良い釣りだった。
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| Fishing | 15:54 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑
その1のいわなは太いですね
でも やっぱりこっちのやまめがきになります
遠出は苦手なのですが 機会があれば遠征したいです
その際はちょっとだけ友達の振りをしてください
大丈夫です めったなことじゃあ口は割りません
死んでも ”サクラバさんに聞いた” とは言いません
| m&M | 2012/06/06 22:24 | URI | ≫ EDIT